2010年11月23日火曜日

タンギングと腹式呼吸など (管楽器の演奏で)

はじめに

吹奏楽・管弦楽などで管楽器を演奏する方々なら腹式呼吸の話は頻繁に聞くであろうし、腹式呼吸が重要だということも、少なくとも言葉の上では知っているだろう。
だが、この記事では、よく言われる腹式呼吸の重要性とは違った観点で見てみたいと思う。

まず、一般に言われる腹式呼吸が必要な理由
  • 安定した息を楽器に吹き込むことができるから
  • 息が長く持続できるから
  • 楽器をしっかりと鳴らせるから
確かに、胸式呼吸よりも力を入れ易いだろうから、楽器を鳴らし易くなるとは思う。が、胸式呼吸と比べて息が長く持つとは私は別に思ったことはないし、胸式呼吸だろうが多分安定した息を楽器に吹き込むことはできるかもしれないとも私は勝手に思っているから、上記の理由は私にとっては割とどうでもいい (ということにしておこう)。

では、何故「腹式呼吸!!」と口を酸っぱくして言うのか

アーティキュレーションをコントロールし、幅広い表現力を実現するための手段
と、私は考えている。
(飽くまで「手段」であるから、バカの一つ覚えの如く「腹式呼吸」とよくわからず連呼するのはやめて欲しい)

アーティキュレーションというと、スタッカートとかアクセントとかレガートとか、管楽器奏者なら直ぐに思いつくと思う。それらをきれいに再現するためには幅広いタンギングのやり方を身につけている必要があると思うが、それだけではなく、息のコントロールも必要だ。

例えば、下の譜面を見てほしい。

ただのスタッカートの練習の譜面と思うかもしれない。

ところで、私が育った水戸市内にある某女子高と某進学校には合唱部があるが、そこの合唱部が高文連主催の音楽会では合唱を披露していた (もちろん私はその音楽会に吹奏楽で参加した)。
発表を行う前には練習をしているから、彼女たちの基礎練習をたまたま見ることもあるのだが、そういった合唱に携わっている人たちが基礎練習に用いることのあるのが下の譜面である (前置きが長くなった w)

お腹のあたりに手を当てながら上の譜面を歌ってみるとどうだろうか。お腹が動いているのも実感できるだろうし、1つ上の "tut" って書いてある譜面とは雰囲気が違って感じる人もいるであろう。これこそ横隔膜を使っている証拠であり、吹奏楽でも上の「ホッ」の譜面同様に演奏することが問われる場合があるのである。

シンセサイザーに例えるなら、腹式呼吸は ADSR を表現するために必要といえば分かりやすいかもしれない (ADSR: Attack, Decay, Sustain, Release の頭文字)。吹奏楽の人でも「音のアタック」「音のリリース」ぐらいなら使う言葉であろう。同じ波形の音色でも ADSR の違いで音の印象を変えられることは、シンセをいじっている人なら実感していると思う。これらを表現するためには胸式呼吸では足りないのである。

鋭いアタック (アクセント) が必要であれば、タンギングでリードから舌を離すと同時に横隔膜から息を押し上げてやらなければならない。これができないと、木管なら指を沢山押さえた時 (例えば Cl のブリッジ音域のシの音など) に音の輪郭がぼやけてしまう。それに加えてスタッカートなら、音のリリースの時に上の「ホッ」に近い息のコントロールがあるとより綺麗に聴こえる。レガートを綺麗に聴かせるためにも、安定した息の入れ方 (と指使い) が問われるだろうから (慣れないと、指使いを変えたときに楽器の抵抗感・吹奏感が変わって感じる人もいるだろう。そこで一定の息を維持する必要がある)、腹式呼吸ができた方が有利かもしれない。

管楽器は、声楽と同様に自分の息をコントロールして表現しているのだから、他の楽器と比べても「歌う」という表現に向いているものだと思っている。だから、腹式呼吸を通して、より声楽的な演奏が出来れば良いと思う。

タンギング

上の腹式呼吸とセットになるのがタンギングだと私は思っている。上の ADSR の関連で特に。
幅広い表現力のためにはタンギングもバリエーションを身につける必要があると思う。
一言、文字で表現するなら「トゥー」「トー」「ター」「ティー」「ドゥー」など、これだけでもそれなりにバリエーションがある。タンギングはタンギングでも、歯切れのいいタンギングなのか、それともなめらかなタンギングなのかは場面によって選ぶ必要はあるだろう。「トゥー」と「ティー」の違いは、演奏する音域。

また、スタッカートの時に私がしばしば意識するのは「ピチカートのような音のアタックとリリース」なのだが、リリースの時にただ何も考えずに舌をマウスピースに当ててしまっては、音がブチッと切れてしまう。余韻を残したい時には、上にも出てきた横隔膜で息をコントロールするのと同時に [ng] の発音のような舌の動きを使ったりもしたことがある (具体的には舌の奥の部分で息を遮る。中国語で言うところの「後鼻音」に近いですね。韓国語にもあるかもしれない)。

余談

日本語の発音のみならず、外国語の発音についても詳しくなるといいことあるかも w
英語で流れるように発音したときに t が d に近くなることがあるとか、中国語や韓国語で無気音・有気音の違いがあったりするが、これらをアーティキュレーションの表現に応用できそうな気がしなくもない。
日本語にはそれらの概念がないし、子音の後にほぼ必ず母音が来るから平坦で固めの発音なのかもしれない。それに対し、韓国語や英語って、子音で終わる発音も少なくないしね。

あと、人が話す言語と楽器の表現って、何処か似たところがあるよね。山形 (内陸) の人と新潟 (下越) の人の演奏を聴き比べていて、アクセントの付き方が正反対だったりしたこともあった。内陸弁は尻上がりだし、新潟弁は単語の頭にアクセントが付きやすい。私がクラリネットを始めたばかりの頃のコンクールの録音とか聴いていて「あ~茨城訛りだな~」と感じることも確かにあった (少人数で1パート1人だったため、自分の音を特定するのは可能だった)。

そういえば、東北弁とフランス語の発音が近いっていう話も聞いたことがあるのだが、実際どうなんだろう ?w

最後に

この記事の内容は飽くまで私の持論である。これとは全く違うことを考える方もいらっしゃることと思う。
私はクラリネット吹きであり、故にこの記事の内容もクラリネットをはじめとするシングルリードの楽器に偏っている可能性がある。他の楽器奏者 (金管、ダブルリード、フルート属など) の方で、「え、それは違うよ」という方もいるかも知れないが、そういうものだ w (もちろん、ご指摘くださっても幸いである)
シンセで使われる概念が上で出てきているから、管楽器奏者からすればある意味新鮮かもしれない (管楽器奏者の多くは管楽器以外の楽器にあまり興味を示していないような気もしなくはないが気のせいだろうか)。私自身、僅かではあるがシンセサイザーをいじったことで管楽器を演奏する上での考え方にプラスに働くとは思ってもいなかった。

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